【記録すると片CHの音が小さくなる】

この症状は、ソニーのデッキすべてに共通の故障です。RECレベル調整のボリュームの接点劣化が原因です。上の写真が問題のアルプス製のボリュームです。

赤丸部分が接点です。これは比較的きれいですが、ひどい場合は真っ黒にススのようなものが付着しています。紙やすりで磨いてやると抵抗値は元通りになります。

【再生してもすぐに停止してしまう】

ESX,ESRシリーズでよくある不具合です。原因はテープの回転を検出するフォトダイオードの性能劣化です。テープの回転は、スリットが設けられた回転盤の、スリットからの光をフォトダイオードで検出します。テープカウンターはこの検出信号をカウントすることで表示されます。フォトダイオードが劣化すると、この信号が検知できなくなり、マイコンはテープが回転していないと判断して動作を停止してしまいます。

上記は劣化したフォトダイオードの出力です。2V-5Vで信号が出力されています。本来はLowレベルは0V近くになるのですが、十分に落ちきれていません。マイコンは、2Vくらいで検出していますので、カウンター正常に進みません。フォトダイオードの入手は難しいので、抵抗でプルダウンし、信号を強制的に0Vに近づけてあげます。

デッキを後ろから写した写真です。赤丸はフォトダイオードの出力ピンです。青丸はGNGピンです。赤丸のピンを120K程度の抵抗で青丸のGNDにプルダウンします。

プルダウンした信号です。Highが3.5V程度に低下してますが、Lowが1Vまで落ちています。これでマイコンで信号の検出が可能となり、カウンターも正常に動くようになりました。

【ヘッドが上がりきれず、再生をやめてしまう】

再生を開始しても、ヘッドが上がりきれずに、すぐに再生を止めてしまうという変わった現象です。通常の1/3程度上がったところで、再生を止めてヘッドがか落ちてしまいます。ピンチローラーが固着していると思い、手で上げてみると普通に上がったので固着では無いようです。デッキの裏側を分解してみると原因が判明しました。

モーターを囲っている帯状の金属板がほどけてしまい、膨らんでいます。ヘッドの上げ下げは、下の写真のようにソレノイドで行いますが、ソレノイドが上下させるレバーが膨らみに当って、上がりきれていなかったようです。

金属板をひきずり出した写真です。

元通りにモーターに巻きつけます。これで完了と思い再生してみましたが、ヘッドが十分上がりきれずにピンチローラーが回転しません。原因はソレノイドの取り付け位置でした。修理の際、ソレノイドを一旦外したのですが、固定しているネジがなぜかネジロックで固定されていました。何も考えずにネジを外してしまったのが間違いでした。ソレノイドの固定位置で、ヘッドの上がり量が調整できるようになっており、ピンチローラーの圧の調整も兼ねているようです。位置ずれが許されないため、ネジロックで固定されていたようです。しかたがないので、別のESXの位置をノギスで測って、ソレノイドを固定したところ、正常に再生できるようになりました。ネジロックされたものは迂闊に触ってはいけないことがよく解りました。(反省)

【録音が全くできない】

再生は正常にできるものの、録音が全くできない現象にでくわしました。外部入力でメーターは正常に振れていますのでDolbyICの出力は正常のようです。(オシロでも確認)

ヘッドへの最終出力段のオペアンプの出力も正常で全く原因がわかりませんでした。カセットデッキの記録には、交流バイアス方式といって、100-200khzの交流を記録信号と重畳しています。(上記図の→の先)この信号もオシロでチョックして一見正常に出力されているように見えましたが、念のため正常動作の同機種の出力信号と比較してみたところ、1/4程度の出力して出ていないことが判明しました。

SONYのロゴが見える四角い箱が、交流バイアスを発生させているモジュールです。下の写真は取り外したところです。

さすがに、このモジュールを開けて分解整備する気にはなりませんでしたので、部品取り用の基板からモジュールを抜き取り交換することで正常に記録できるようになりました。