ESGシリーズ特有の故障事例を紹介します

コンデンサの劣化

ESGシリーズ(222除く)は、再生系基板と記録系基板の電源とドルビーIC周りにコンデンサにエルナー製を使用しています。コンデンサが悪いのか、設計が悪いのかは分かりませんが、大半のデッキでこのコンデンサがダメになっています。写真は容量抜けしたコンデンサです。

電解液が漏れ出して、腐食しています。容量もゼロになっていますので、全く機能していません。機能しないだけであれば音が悪くなる程度ですみますが、場合によっては漏れた液で周辺の部品がダメになる場合があります。下の写真は電源周りの写真です。

腐食したコンデンサを外した写真ですが、青丸の抵抗の足は電解液にやられているのが分かります。今回はやられていませんが、赤丸のツェナーダイオードが電解液にやられると致命的です。このツェナーは再生基板の±電源を生成しています。このツェナーがやられると電源がダメになり再生が全くできなくなってしまいます。

基板の裏側です。漏れた電解液で基板の裏側も腐食しているのがわかります。

ESXシリーズもエルナーを使っていますが、なぜか腐食したデッキを見ていません。ESL以降は、エルナー製のコンデンサは使用されていませんの、このような問題はありません。

ドルビー動作不具合

デッキの組み上げが終わり、いざ音出しをするとDolby-CをONした時の高域特性が悪くなりました。OFF時は問題ないのでヘッドの問題ではないようです。DolbyIC周りの不具合と思い、信号を追っていたところ、DilbyICの38ピンがDolbyC,B,OFFと切り替えると電圧が変動するはずですが、全く反応がありません。さらに追って見ると基板のパターンの腐食が見つかりました。

一番下側のパターンが腐食して断線しています。仕方がないのでピンとピンをジャンパー線で直結して修理しました。このような故障は非常に稀なケースだと思います。周りにコンデンサがある訳でも無いのに不思議です。

カウンターの進みが異常に遅い

カウンターの不具合といえば、ESX、ESRシリーズの定番といってよい不具合ですが、今回はESGです。ESXと違いカウンターが全く進まない訳ではなく、通常の1/3くらいの速さでしか進んでいます。とりあえず、速度検知センサーの出力をモニターしたところ、送り側の出力が全く出てませんでした。明らかにセンサーの故障です。ESGシリーズ以降の速度検知センサーはすべて共通で、発光部と受光部が一体となったセンサーが使用されています。

下の写真は、左側のセンサーの拡大したものです。

黒いセンサー中央に線を堺に受光部と発光部に分かれています。

原理は簡単です。反射面と黒面が交互に配置された円盤が、リールの回転にしたがって回転します。センサーから赤外が発光し、鏡面を通過する時は反射があり、黒面を通過時は反射が無いことで、リールの回転速度を検知しています。このセンサーが左右のリールにあり、それぞれの回転速度から、おおまかな再生時間を割り出して、カウンター表示します。今回は、このセンサーを部品とりデッキから取り外し、交換することで正常にカウントするようになりました。


DolbyICの不具合

アジマス、再生レベル、記録レベル等の調整が終わり、DolbyをONにしてみたところ、音が急にコモッた感じになってしまいました。これまで経験したことのない症状です。DolbyのOn/OFFで、音質に影響があるような経路は無いので、DolbyICの不具合の可能性が高そうです。

ソニーのDolbyICは、TC-K333ESX以降変わることが無く、CX20188が使い続けられています。他社のデッキでもよく使われている最もポピュラーなDolbyICの一つです。3ヘッド機には、再生側と記録側にそれぞれ一つづつが使用されており、再生側のICを交換です。予想どおり、正常に再生ができるようになりました。このIC、チップワンストップで検索してみたところ、「在庫確認要」でリスト表示されていました。まだ購入できるようであれば驚きです。

キャリブレーションが解除されない

デッキの分解整備を終えて、いざ再生をしてみると全く再生出力が出てきません。この様な場合は、たいてい再生基板に供給する電源に問題があるのですが、今回は電圧は正常です。DolbyICの入力まで信号は来ていることは確認できたので、問題はDolbyIC周辺にありそうです。さすがに連続してDolbyICの不具合は無いと思い、DolbyICに入力されている制御信号を診てみることにしました。すると、キャリブレーションのON/OFFで電圧が変化するはずのピン(5ピン)で、電圧が固定(キャリブレーションON状態)されていることが判明しました。更に信号を辿って行くと、制御電圧の生成に関わっているダイオードが見事に破壊されていました。

周辺の部品は綺麗な状態なので、腐食では無く、素子が破壊されてしまったようです。腐食以外でダイオードが破壊されているのは初めてみました。ダイオードを交換することで、正常に再生できるようになりました。