テープの巻込み

ソニーのデッキは他社と比較してテープの巻込み(いわゆるワカメ)が起こりやすいのですが、中でもESLシリーズはよく起こります。原因は送り側のピンチローラーのプラスティック製の軸受けの劣化が原因です。

これが送り側のピンチローラーです。赤丸の軸を中心にピンチローラーが回転しますが、この軸を受けるプラスティックの軸受の腐食が原因です。

写真の右が、腐食した軸受です。変色し、身が細りボロボロです。こうなると、ピンチローラーが軸を中心に回転できなくなり偏心回転を起こします。その結果テープ送り速度にムラが発生しテープの巻込みが発生します。左は知り合いのモデル屋さんに製作してもらった同等部品です。

部品交換したピンチローラーです。これで正常に回転するようになりました。この症状はESLシリーズ特有の現象であり、他のシリーズでは見たことがありません。プラスティックの軸受に問題があるのか、ピンチローラーに問題があるのかは不明ですが、どちらかの素材に問題があると思われます。

リモコン受光部不良

電源を入れると、いきなり早送りを始めたり、電源が落ちたり、全くわけの分からない状態になる現象が、ESLシリーズでは見られます。このような症状になった場合は、ほぼ間違いなくリモコン受光部の不良です。リモコン受光部が壊れて、ランダムな信号を出力することで、このような症状になります。

これが問題の受光部です。

シールドケースを外したところです。3本の電解コンデンサがならんでいますが、このコンデンサの液漏れが原因で異常信号が受光部から出力されます。コンデンサ交換で正常に戻りますが、漏れた液でセンサがやられていると修理不能です。ジャンク品はリモコンが付属していない場合がほとんどなので、受光部無しでも問題ありませんので、基本的に受光部を取っています。(盲腸みたいなものですね)

キースイッチの劣化

再生キーを押すと早送りになったり、ポーズを押すと巻き戻しになったりと、意味不明の挙動になるケースがよくあります。これはソニーのデッキ共通の症状で、原因はキースイッチの劣化です。

これが問題のキースイッチです。スイッチはONされると導通し抵抗値はゼロとなりますが、このような症状がある場合、導通しても抵抗値があります。スイッチの接点が劣化または汚れる等で抵抗値を持ってしまうようです。ごく初期の場合は何回もスイッチを連打することで、正常に戻ることもありますが、たいていスイッチの交換です。このような症状がある場合、すべてのスイッチを交換することをお勧めします。(12,3個です)

キャプスタンモーターが回転しない

これもESL固有の症状ではないのですが、電源を入れてもデッキが全く動作しない場合があります。電源が供給されていないことが原因なのですが、モータードライバーICの不具合、電源IC(レギュレーター)の不具合が考えられますが、今回はいずれのケースでもありませんでした。

調べてみると、真ん中のレギュレータから電源(9V)が出力されていません。さらに調べてみると、レギュレータ自身に電源が入力されていないようです。

R774と印刷された、ヒューズ抵抗が切れていることが原因のようです。このデッキは前所有者が中を開けた形跡がありましたので、その際に渦電流が流れてヒューズ抵抗が切れてしまったのでしょう。

ヒューズ抵抗を取り替えて正常にモーターが回転するようになりました。結構特殊な抵抗のため、交換に\1000もかかってしまいました。( TДT)

片チャンネルの音が全く出力されない

外部入力をスルーで出力しても、カセットを再生しても、片チャンネルの出力が全くありません。両チャンネル出力されない場合は、電源や、オペアンプの故障が想定されますが、片チャンネルの場合は、接触不要、半田ラックが考えられます。今回は、スルーでも再生でも片チャンネル出力されないので、最終段を集中的に診てみたところ、ありました、半田クラックです。

黒い線が中心に入っているのが、半田クラックです。再半田することで、正常に出力されるようになりました。

メーターが左右で大きくずれた表示になる

外部から信号を入れたところ、左右でバランスが大きくずれた表示になっていました。これまで、修理をしてきて初めて見る現象です。

回路図を見たところ、DolbyのICからのモニター出力が、オペアンプを2つ経由して、FL管へと出力されています。写真の赤◯と青丸が対象のオペアンプです。まず、前段の青◯のオペアンプ(バッファ)の出力をみましたが、両チャンネルとも正常に出力されていました。次の赤丸のオペアンプで、FL管をドライブするための波形整形をしていますが、このアンプのRch側の出力が異常になっていましたので、オペアンプを交換しました。

三菱のオペアンプが使われていました。いまでは半導体はルネサスに移っていますが、ルネサスでもオペアンプは作ってないと思います。交換により正常にメーターが振れるようになりました。

メーターが入力も無い状態で振れる

今回もメーター関係のトラブルです。再生をしていない時に、メーターが振れる怪奇現象です。常に振れる訳ではなく、時々思い出したかのように振れています。この症状は222ESL特有の不具合です。記録系と再生系の仕切りをしている銅板があります。

この銅板は5箇所が半田づけで固定されていますが、その半田にクラックが入ることで、怪奇現象が発生します。

半田クラックが入っていることが判ります。5箇所全部の半田をあたり直し、症状はなくなりました。初めて、この症状に出くわした時は、なかなか原因が判りませんでした。たまたま銅板に手が振れて症状が出たり出なかったりすることに気が付きました。

モードベルトが...

モードベルトが劣化すると、再生モードに移行できなくなります。最初は、再生のみができなくなり、症状が進むと早送り、巻き戻しができなくなります。最終的には、イジェクトもできなくなってしまいます。モードベルトは、時間がたつと加水分解を起こし、伸びてきます。そして放っておくと最終的はドロドロに解けてしまいます。写真は、ドロドロになる直前のベルトです。飴のようにグニャグニャです。もちろん、こうなってしまうとイジェクトもできません。

表示管にゴミが表示される

FL管(表示管)に、まったく関係の無いセグメントが点灯する(または点灯しない)ことが時々あります。こういった場合、たいていがFL管のピンの半田不良が原因となっています。但し、目視した限りでは半田クラック等が見つからないことが大半なので、すべてのピンを再半田することとなります。

上の写真はFL管のピンを、再半田したところです。下の写真の通り、再半田することで表示は正常になりました。